2000年代初頭、“1円”を追いかけていた時代
2000年代の初め、私がガソリンスタンドにいた頃は、まさにガソリン価格が集客の要因でした。ガソリンが100円を切るか切らないか。隣のスタンドが1円でも下げれば、深夜でも看板を差し替える。「明日、あそこの価格が動くらしい」そんな情報ひとつで現場がピリピリするほど。あの頃は安さこそ正義で、デフレの中をひたすら走っていました。
燃料では稼げない。だから、上から降りてくる言葉はいつも同じ⇨「油外で稼げ‼︎‼︎」
洗車、車検、車販売の3本柱。ドルフィネット(通信型販売)のような新しい試みも始まっていましたが、まだ時代が追いついていなかった…。画面の中だけで中古車を⁈現物見ないで買うなんて…当時は誰も想像していませんでした。売る方も“買う人いるの⁈”が正直なところでした。でも現場は走り続けていた。お客様の流れを見て、タイミングを探り、深夜まで油外セールストーク。
午前0時にオイル交換作業も当たり前、作業料とオイル利益が刻まれます。翌日も朝から業務に…“24時間働けますか?”はちゃめちゃな働き方だった。
ディーラーでもなく整備工場でもない、微妙な立ち位置のガソリンスタンド…やっつけ販売、言葉を選ばなければ、詐欺まがいなケミカル販売も日常化しており、販売目標達成のため、ゲーム感覚でお勧めしていました。
あれから二十年。変わったのは“空気”
気づけば、あの頃のスタンド内の熱気はすっかり静かに感じる。セルフ化が進み、人と人の接点が薄れ、店舗を見渡しても、昔のように声を張り上げるスタッフはいない。
全国のガソリンスタンドの数は1994年の約6万か所から、2024年度には2万7千か所台まで減少。つまり半分以下になったんです。(出典:資源エネルギー庁・石油連盟統計)
セルフSSも増えました。2000年代前半ではまだ珍しかったけれど、今ではコスモ石油の店舗の4割以上がセルフ。(全2,546店舗のうち1,133店舗。2024年度)
“人が立つ”スタンドから、“人が管理する”ガソリンスタンドへ。その転換点を当時、私は肌で感じています。
利益率も厳しくなりました。SS事業全体の営業利益率は1〜2%台。単店では厳しく、複数店舗をまとめて運営する「カンパニー体制」が主流になったのも自然な流れでしょう(○○石油・○○商店が統合)
小さな店を寄せ集めて、一つの“会社”として動かすことで、監査や人員配置、在庫、販促をまとめて最適化できるのでしょう。
東北カンパニーという現実
東北でも「東北カンパニー」という表記をよく見かけるようになりました。
正式にはコスモ石油販売株式会社 東北カンパニー。
この仕組み、見方を変えれば、「人材不足と地域特性に合わせた現実的な形」だと思うんです。
店舗をまたいでスタッフを配置するのも珍しくありません。元現場目線で言えば、これは不正防止と効率化の両面を狙った運用にも見えます。
単独では無理ゲーだった
数字や利益より寄り添う地元経営…先走り過ぎた通信型中古車販売…残酷だが結果それがダメだった。
社会情勢、人口動態、現役世代の購入意識…この流れに乗り遅れたのが要因だと感じます。
「温かみ、寄り添う接客」フルサービスが正義!その思想は未来を見ていない…昭和の精神論でした。
コスモ石油の「静かな戦略」
燃料価格での勝負ができない時代に、コスモが注力しているのが「Myカーリース」です。
車検・税金・メンテナンス込みの定額制で、2019年度の契約台数7万3,000台が、2024年度には13万1,000台を突破。
(出典:コスモエネルギーHD 2024年度決算資料)
リースという形で、最初から最後までカーライフを囲い込む。それは「誰にでも売る」ではなく、きちんとした与信があり、車を大切に扱う層を対象にしている。静かなセールスで確実に、“量より質”の世界へ進んでいる。リスクある大勢の顧客より、売っても大丈夫な少数の余裕ある顧客…広さより深さを狙っているのではないでしょうか。
洗車文化のこれから
KeePerのような洗車技術が一般化しても、それを担う人材が足りないのが現実です。「やる人がいない」この言葉が近い将来訪れます。ずんがり来店しても、作業はしてもらえません。事前予約はもちろん、値上げの可能性もあります。
“熱気”から“設計”の時代へ
昔のスタンドは“人の熱”“オラオラ販売”で動いていた。いまのスタンドは“仕組みとプロの責任”で動いている。あの頃の1円をめぐる戦いから、いまは“どんな価値を積み重ねるか?“そもそもそのサービスが受けれない”静かに見えて、変化のスピードはむしろ速くなっている。コスモ石油東北カンパニーを見ていると、そんな時代の流れを感じるのです。
クルマ社会で地方を生きる人と共に伴走する経営戦略なのでは…そんな感じがしました。